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またピアノの話で恐縮です

  ピアノばかりさらっているが、バッハシンフォニア2番というのはなんという名曲なのだろう。そして昔、どうしてそんなことがわからないで弾いていられたのだろう。子どもだったんだということだが、人生いろいろを経てこう細胞も衰え、生殖も出来なくなり、あとは徐々に心拍数なども減り、緩慢な死を待つその時に「聞こえてくる音」が増えていく・・、なんというご褒美だろう。たぶん耳は衰えているだろうに。

 井口基成版、もう今使っている人少ないんじゃないか?な版を使っているが、指の指示がほんとに丁寧。学生の時は「原典版」、でも私はそれに井口版の指ふってたからね。
 ヘンレ版のベートーヴェンの厚いソナタ集にヴィトンかクレージュのバックさげて学校行くのがいけてた。洗足学園という学校自体はいけてなかったが。経営に失敗した音大、という感じ。今はロック科すらある節操のない経営をしているが、暮れにそこのミュージカル科のAOを受けたいという相談者がいたが、あきれ果てた。試験2週間前に課題曲も決まっていない、しかも焦っていない、うまいのかと思ったら音程も危ない、いや、きっと受かっちゃったんだろうが、いい加減にしよう、そんな子どもまで集めて資金調達しなくてはならないなら、音大なんかやめてしまえ。

 
 学費がやたら高いので、金持ちしか行けないが、自営業なお父ちゃんを持つ子弟ばかりであった。土建屋とか不動産屋とか近郊農家のお父ちゃんは、ちょっと(ちょっとな)ピアノの弾ける娘が自慢で、C7のグランド持ってる子もいた、時はバブル景気、土建屋から「音楽やる娘」というのは進化だろう、ミニミニ角栄、日本列島はそれこそ細かく改造され、改造論実践編という時代、ばかでもちょんでも土地持ちに恩恵が。金はあっても、ばかとかちょんの子どもなので頭は悪いんである。この時期つまんない左翼的思想なんか持ち合わせないがよろしい、いい時期に土地うまく転がした人が勝ちだった。よっしゃ、とうちゃんは何でも買っちゃうぞ、そうかそうかヨーロッパ旅行か、金は出してやるぞ、ヨーロッパだかんな、さてそのヨーロッパって国はどこにあるんだ?(実際私の友達はヨーロッパ旅行の費用を出して貰うとき父親にそう聞かれた。費用は相談したら一秒で快諾)日本郵船が洗足と組んだヨーロッパ豪華3週間の旅は300名も参加。覚えてないがいいお値段だったと思う。いちいちホテルとか豪華だった。一行はパリのヴィトンを買い尽くした、もう今の中国人を全く笑えない、ウイーンのムジーク・フェラインを一晩借り切った、大型バス8台、ローテンブルグもハイデルベルクも小さな町なので、一気に人口増加。ライン川下った、ノイシュヴァンシュタイン上った、ルーブル行った、べたべたのおのぼりツアー、毎日フルコース、私の青春の一回目の頂点だったかも知れない。いや、2回目とか無かったが・・。
日本にいる指揮者のカレシに毎日手紙を書いて投函した。あとからそれが父親にばれてあきれられた。「出資者には一枚のはがきもないんかい?」ほんとにそうだよ。

でも私たちは至極まじめにピアノの練習に励み、その後ヤマハやカワイにつとめたり学校の先生になったり、自宅でピアノの先生になったりで、それほど音楽に才能がなかった分、そこそこの「家庭生活」も得られ、ただの専業主婦になるより、自宅でピアノ教えてた方がましな感じがするじゃん、にはなれた。「音楽生活」もお肌をいためない程度にやっているもので、お子たちの教育もまあまあそこそこ出来、おかあさんはピアノが弾けると言うのはいいじゃないか、うん、そう家内は音楽やってたもんで、音感にはうるさいんで、はは、私なんかカラオケばっかりですが、ははは・・などというお父さんのちょっとした会社での自慢の家内にもなっているわけだ。

わたしも「そこ」で静かにしてようと思ったが、それにはちょっと何かが足りなかったか多すぎ、でも「そこでないところ」に行くにはやはり何かが足りない。でもこの歳になっても「分」を知りたいとは思わないほどに不遜な根性だけは持ち合わせているのである。

井口版
指の指示があるとうっとうしい、といってた友達がいたが、私はバッハは指が書いていないと弾けない。特に3声、4声は。井口版は指守っていると自然に3声になるように設計されている。改めてすばらしいなあ、と。この時期の斉藤、井口、安川などのフロンティアってどうしてこんな仕事が出来たのだろう?日本の音楽界はそこからすばらしい発展をするわけだが、この人々の功績って漫画でいったら手塚みたいな。

安易になにかが得られないときにドM心が騒ぐ人々っていますよね。この教室はドMの会と呼ばれております。私が厳しいのではなく、「音楽の欲求」って厳しいです。生徒は現生活に不足なことがない人々のように思えるのだが、そうなればそうなったで

 すぐに手に入らないものが欲しいです。イトイのコピーに「欲しい物が欲しいわ」ってあったか、「手に入らない物が欲しいわ」あるいは「欲しい物は手には入らないわ」だわ、これからのポスト消費社会の「消費」は。一番初めに思い知ったのが自分の下手ピアノであった。これほど努力して得られない経験をしているので、私はたいていのものは手に入らないと思って努力できるが。もう努力でもないのかも。習慣化はあきらめの一形態なのかもしれないが。教えていて、どうやったら出来るのかマニュアルのようなものをほしがる人がいるが、 

その質問が出たら、土建屋からやり直しだな。

 最近はお子さんのピアノレッスンは娘が独占しているが、先月発表会を手伝った。なかなか良い会だった。こいつのほうがはるかにピアノは上手いが、あ、でも私もピアノ教えていますので、おばさんに習いたい人はぜひ。電気楽器不可。
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 私は学生の頃から引きこもりがちな読書好きな人間だが、ピアノを愛してやまなかった。何度も書くが、ピアノから愛されなかっただけだが、練習はベタにべたべたにやっていた。ピアノは英才教育の履歴が手に残るので、小さいときから良い先生について、毎日よく練習したものだけが、まあまあ弾けるようになるのである。あちこち良い時期を逃した私のピアノはよってこんなもんだが、こんなものにどれだけ時間を遣ったことだろう、でも家にいられる口実になるので、それでよかったんだけど、だんだん欲がでたんですね。土建屋の子弟が行く洗足学園も行かせてもらい、夢を語ろうか、60までにクラマー・ビューローという娘に言わせると音楽性のない教材を終わりまで弾けるようにしたい。バッハも平均率一巻は終わらせたい。どうして30年もブランクにしたかな?悔やまれます。

 そんなこと気にしなくても大丈夫だよ、その前に地震が来て死んじゃうから、と鎌倉の先生は前回のレッスンで言いました、久しぶり、一本はいりました。


 

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